東京高等裁判所 昭和35年(う)325号 判決
被告人 赤塚正雄
〔抄 録〕
所論は、原審は被告人に対する昭和三四年一〇月三日起訴にかゝる窃盗被告事件を本件(昭和三四年一〇月三一日起訴にかゝる強盗傷人、公務執行妨害、傷害被告事件)に併合審理すべき旨の決定をなしながら、右窃盗被告事件につき審理をなさず、これを遺脱して判決した違法があるというのである。よつて所論に基き本件記録、並に、原判決を仔細に検討すると、原審が昭和三四年一一月一一日被告人に対する同年一〇月三一日起訴にかゝる強盗傷人、公務執行妨害、傷害被告事件(昭和三四年合わ第三七三号)に、同被告人に対する同年一〇月三日起訴にかゝる窃盗被告事件(新宿簡易裁判所昭和三四年(ろ)第八九四号)を、併合審理する旨書面による決定をしたことは所論のとおりである。しかして、昭和三四年一二月二三日原審第一回公判期日の調書によると「本件(昭和三四年一〇月三一日付起訴)に、昭和三四年一二月七日付起訴の被告人に対する強盗傷人、窃盗被告事件を併合して審判する」旨の記載があるのであるが、前記のとおり昭和三四年一〇月三一日起訴にかゝる強盗傷人、公務執行妨害、傷害被告事件については、さきに書面により同年一〇月三日起訴にかゝる被告人に対する窃盗被告事件を併合したのであるから、右両被告事件に更に同被告人に対する昭和三四年一二月七日起訴にかゝる強盗傷人、窃盗被告事件を併合するに当つては、右両被告事件を表示して、これに昭和三四年一二月七日起訴の強盗傷人、窃盗被告事件を併合する旨公判調書に記載するのが正確と云わなければならない。しかし本件の如く昭和三四年一〇月三日起訴にかゝる窃盗被告事件の表示をなさなかつたとしても、さきになされた書面による併合決定により、既に右窃盗被告事件は昭和三四年一〇月三一日起訴の強盗傷人、公務執行妨害、傷害被告事件に併合されたものであるから、右強盗傷人、公務執行妨害、傷害被告事件に昭和三四年一二月七日起訴にかゝる強盗傷人、窃盗被告事件を併合する旨の調書の記載があるときは、当然前記窃盗被告事件もこれらに併合されたものと解するのが相当である。しかして、同公判調書、並に、原判決によると同公判期日において検察官は昭和三四年一〇月三日起訴にかゝる窃盗被告事件についても起訴状の朗読をなしたものと推認せられ、これに対して被告人及び弁護人の意見の陳述があり、つゞいて検察官の証拠の申請があつて、原審は右証拠につき取調べをなした上、適式に審理判決をしたことが明かであるから、原判決には所論の如く審判の請求を受けた事件について判決を遺脱した違法は存しない。論旨は理由がない。
(山本謹 渡辺好 目黒)